1日目・「Chocological」



Chocological 

by suzuri





薄暗い箱の中
ほつれた髪
少女らしかぬ地味な服
わずかに光射しこむ窓


少女は今日も空想の世界へと潜ってゆく


少女にとって空想とは薄い膜で守ってくれる、優しい母親のような存在でした


少女の本当の母親はふらりと家に寄っては酒を飲み、母親とは言えぬヒトでした


少女もそのヒトからの愛情についてはみじんも期待しておりませんでした


でも・・・
本当に?


少女は最近
ある空想に夢中でした


それはとても甘く、
触れたらとけてしまうような、
暖かく、優しい物語でした


それはお菓子の城の夢でした


もちろん、外側の世界ではそんなことできっこないですが、ここは夢の中
そんな無粋なことは思わなくていいのです


「想像力」という魔法をつかってしまえば
紫色の美しい魔女になることも、
愛の花に包まれて空に溶けることも、
一途な潜水艦の操縦士になることだって、
どんな物にもどんな人にだってなれてしまうのですから


さあ、早くつくりましょう
おいしい想像は無駄にできないもの


壁はマーブル模様がおしゃれな板チョコ
屋根は葉巻型のチョコで
お庭のプールは粉砂糖をまぶしたキャメルチョコ


さあ魔法のお歌を歌って
私の心は隠し味
もうお城の完成は間近




コンコン


はーい


ある日、
彼女の所に、
ピンク色の象がやってきました


どうやら象さんはお城の中に入りたがっているようでした
少女はピンク色が大好きだったのでもちろん歓迎しました


その日からです
異変が起きたのは



お城が食べられていたのです


少女は悲しみに明け暮れました
そして少女は見てしまいます


象さんがお城を食べる所を


それでも彼女は止められませんでした


象さんが大好きだったのです
少女は象さんといるときが一番幸せでした


たとえ象さんにどんなことをされてもーー


少女は毎日泣きながら、
穴のあいた壁を、
傷のついた屋根を、
チョコのなくなったプールを、
直し続けました


それでも象さんは食べて、食べて、食べてーー
次第に少女の直すスピードが追いつかなくなっていきました


ボリボリ
ザクザク
パキパキ
ムシャムシャ
パクパク
お城を、
夢を壊して


ああ、
あなたは食べてしまったのね


私の
お城も
希望も
想像も


あなたは壊したのね


私の
汗も
涙も
血も
そして信頼も


そしてお城を食べ尽くしたら、
あなたはそっぽを向いてどこかへ行ってしまった


あなたはまだ私の心をズタズタにするのね


それでも【私は・少女は】怒らないわ
だって、


チョコロジカルだから
チョコロジカルだから
チョコロジカルだから





【あとがき】



どうも!作者のsuzuriといいます!
今回はHueリリース企画に参加させてもらって、非常に嬉しく思っています!


このお話を思いついた、というよりはずっと心の中に溜めてあった解釈をまとめたつもりです…


この話を書いてる途中、スマホがおかしくなってしまい、データが全部ふっ飛んでしまったので初め書こうと思っていた話と少し違いますが、それもまたいいのかなと思いました

そして最後に、迷惑をかけてしまった主催者の春子さんとこまさんに、ありがとうございます と すみません を、
こんな拙い文章を読んでくださった皆様に最大の感謝をおくらせていただきたいと思います!



Hueリリース企画・文章作品

Hueリリース企画は Miliの1stミニアルバム『Hue』 の発売を記念した ファンアート企画(非公式)です。 開催期間:2017/5/15〜5/24 小説・歌詞訳・詩など 個性的な文章作品が集結しています♪ ファン渾身の作品、必見です! Twitter【@hue_release_】掲載の イラスト作品も要チェック!

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