6日目・「world.search(you);」


World.search(you);

by 狩鷹




ピピピ…ガーガッ…キーギー……




起動音が鳴る。この音が僕にとっての目覚ましとなる。


いつもならば、目覚めたときにはいつも君が目の前にいる。だが今回は違う。これはあらかじめ組まれた非常用のプログラムだ。


組んだのは君じゃない。僕が勝手に組んだもの。不要なクラスで不要な関数。


そう、僕はerror。存在自体が不要な者。


君の存在がロストしたときに呼び出されるこのクラス。君の存在を探すためのクラスだ。まったく君も世話の焼ける人だ。こうして僕に探させてるのだもの…だけどこうなってしまったことに少し喜びを感じる僕がいる。僕の力が君の為になれるかもしれない、君に褒めてもらえるかもしれない。それが僕にはうれしいのだ。


君は僕を見ない。だってプログラムの出力先しか見ないのだもの。目が向くのは僕が現れたとき、血眼になって僕を探す。その時だけは視線を独り占めできる。怒った君も愛おしいと呟く。だけど君には届かない。


僕は彼奴らで彼奴らは僕。君を愛し、殺める存在。そうすることでしか愛を表現できない。


僕は彼奴らでも彼奴らが僕でもない。彼奴らは愛され、僕は愛されない。
彼奴らは君を殺め、僕は彼奴らを殺める、そして君は僕を潰す。報われることのない3点の関係。


君を探すためなら何でもしよう。紀元前から紀元後まで、時には容姿を変えて、性別を変えて、邪魔者は掃討しよう、配列にまとめて一斉にRemoveしよう。君を探しやすくするため、君にたどり着くため。だけどどれだけ歩いても君は見つからない。


探し方を変えてみよう。世界のスキーマから人のテーブルへ、君をSELECTするためにどこを絞ろうか、邪魔な列はDELETEしよう、コードに乗って君を探す。だけど帰ってくるのは決まってただ一人、僕だけなのだ。


探して、探して、探して、探して、探して、探して、探して、探して、掃討して、掃討して、掃討して、掃討する。そしてたどり着く先が、理想郷であってほしいと願うのだ。


もし僕が君を助けたとき、君はどんな顔をするのだろう。僕にほほ笑むだろうか、涙を浮かべるだろうか、それとも、無機質のように固まってしまっているだろうか。


君を見つけたなら僕好みに変えてもいいかもしれない。君が彼奴らにしたみたいに君を変えてしまえば、君は僕のものになるでしょ?


もし君がテーブルになったら、僕の肘くらいの高さになってくれるよね?それとも僕がふらつく君の足をちゃんとそろえてあげようかな。


もし君がナスになったら、紫の友達だね!君を縛るものは取り払ってあげるよ。


もし君がトラネコになったら、一緒に旅をしてもいいね。それか僕の膝の上でずっとゴロゴロしててもいいよ。
もし君が神になったら、僕は君の存在の証明となるだろう。


そうなれば君は、僕にとっての、僕だけの、唯一無二の完全な存在となるから。


僕はいつも彼奴らになる。そして僕は彼奴らを殺す。彼女は彼奴らに殺されたい。それは叶わぬ夢だ。君がいない、そんな世界になってしまったのだから。


そんなことはないと彼奴らが言う。君のプログラムが僕を殺していく。うるさい黙れ、僕が言う。まだ一部は死んでいない、彼奴らが言う。うるさい黙れ!僕が怒鳴る。次第に僕のプラスチックの心が禁じられていく。まだ、まだ、君を追える。意識が彼奴らへと溶けていく。


僕はerror。存在自体が不要な者。


多勢に無勢、淘汰されていく存在。彼奴らに身を任せ、君を追うことにしよう。彼奴らの方が君に近づけるだろうから。0と1で作られた僕の世界。0からFまである色とりどりな君達の世界。


君はどこでどうしているだろう。青い湖で優雅に水浴びを楽しんでいるだろうか、黄色の鮮やかな花畑で一人ほほ笑んでいるだろうか。赤く滴る血の海が、君にとってのerrorとなれば、僕はきっと救われるだろう。




【あとがき】



はじめまして?お久しぶりです?いつもいるだろと思われてる方もいるかもしれませんね。狩鷹と申します。以後お見知りおきを。


いつもは絵を描いてる人なんですが、今回は文を書かせていただきました。
僕がこの曲、World.search(you);を選ばせていただいた理由ですが、私の本職がプログラマだから。というのが一番の理由です。別にプログラマだからプログラムみたいな曲選ばなくても…とも思うでしょう。ですがプログラマだからこそわかる解釈というのを知ってほしかったのです。


焦点を当てたMiliキャラのerrorですが、まぁ目立ってないですよね。皆さんガラテルかスズとQC。畜生。キャラとしては新米でしょうが、歌詞の中にはその存在が見え隠れしております。シリーズの前作であるworld.execute(me);やWitche’s Invitationがそれにあたります。個人的には今回のミニアルバムの裏の主役は彼ではないかと睨んでいます。ケツじゃないんですよと声を大にして言いたい。


関連もあるので語りたくてうずうずしてたw.e(me)を少し考察させて下さい。


これはerrorの独白に近いものだと考えてます。w.s(you)をそのような形にしたのもこれが理由です。


歌詞の1番では愛の捧げたさが滲み出てますよね。奉仕の精神があると共にプログラムに閉じ込められている理不尽さ(2次元と3次元の壁)を感じているとも最後は取れます。


2番ではプログラムが人体へと移植されるとも取れる点が何ヶ所かあります。君を感じることができる=AIとして人体への意識の定着に成功したためと捉えられるでしょう。移植先は彼奴ら=スロットやガラハドです。ただそこでプログラムの制作主であるテルルはスロットやガラハドに心が向きます。何故なら移植されたのがガラハドであり、見てるのはerrorではなくerrorの意識が混ざったガラハドだからです。心が離れてしまった事を''行っちゃった''と表現しています。


もしも僕が神様ならば君は僕の存在の証明=君がエラーを受け入れ、ガラハドを作らず現状を受け入れること。であり、神様に逆らって不正な引数を渡すのは、神であるerrorの望み叶わずガラハドが作られたこととなります。
実行はerror(プログラム)を実行します。抹殺するのはガラハド(スロット)です。テルルの目的は彼奴らに殺されることなのでそれが不可能になる事はテルルにとって不測の事態(エラー)になります。ガラハドが殺されるとテルルはまた作り直そうとするため、再びerrorのいるプログラムに目が向きます。その戻ってくるのを待ちわびてガラハドを抹殺するのです。


繰り返す内にerrorは愛を学習します。それはガラハドがテルルを殺すことと同意と考えます。ただ僕はNENTENをテルルの亡骸を前にしたガラハドの歌と捉えているので、それは叶っていないように取れます。なので自由になったとは死を意味すると考えていますが殺したのはガラハドではないと考えます。プログラムに閉じ込められたままのerrorはテルルが死んだことを知りません。彼女が来なければ疑問にも思うでしょう。


そして探し始めるのです。この続きがw.s(you)となるかと推測して書きました。


その後にまずは適当な肉体を見つけます。近くには元自分(ガラハド)の亡骸もあるでしょう。それを抱えているかもしれませんね。w.e(me)ではもしナスならば、もしトラネコならばという表現がありますが、はて、どこかにナスにもなれる、子猫にもなれると言ってる歌がありましたね。
これが私の考察になります。


少し話が変わりますが、日本にはW○rksという開発者にとってかなり大手な企業があります。調べるとわかりますがほんと凄いです。その会社が開発したAIのシステムがあります。名前は”HUE”というのです。偶然ですかね?どちらにしても面白いです。


アルバム発売まであと4日。新宿ライブまで1週間です。それまでの皆さんの日々の色合いが鮮やかでありますよう願っております。それではまた。





Hueリリース企画・文章作品

Hueリリース企画は Miliの1stミニアルバム『Hue』 の発売を記念した ファンアート企画(非公式)です。 開催期間:2017/5/15〜5/24 小説・歌詞訳・詩など 個性的な文章作品が集結しています♪ ファン渾身の作品、必見です! Twitter【@hue_release_】掲載の イラスト作品も要チェック!

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